日本映画

おかあさん(昭和27年)

。このドンズバ過ぎるタイトルにちょっと引き気味になってしまうかもしれません。その通りで正真正銘、おかあさんを主人にした家庭劇です。おかあさんを演じるのは田中絹代で、当時43歳の田中は戦前のトップ女優だったのが、戦後ある事件をきっかけに人気が凋落。そのスランプから脱したのが、溝口健二監督作品『西鶴一代女』でした。
日本映画

流れる(昭和31年)

この『流れる』は、もとは幸田文(幸田露伴の娘)の小説が原作で、幸田文が生計を立てるために芸者置屋の女中として住み込みで働いた自らの経験を書いたもの。映画でも芸者のリアルな生活が描かれていますが、なにしろ出てくる女優陣がものすごい顔ぶれで、こんなビッグネームを軽くさばくような演出ができてしまうのが成瀬巳喜男が尊敬されるゆえんかもしれません。
日本映画

紅の翼(昭和33年)

石原慎太郎の小説を映画化した『太陽の季節』でデビューすると、すぐに『狂った果実』で主役を演じた石原裕次郎。それから二年少ししか経っていないときの主演作が『紅の翼』ですが、その間に二十本以上の作品に出演する売れっ子ぶりでした。裕次郎を発掘したのが水の江瀧子。戦前、松竹歌劇団で「男装の麗人」と謳われたターキーは、戦後日活で映画のプロデューサーとして大いに活躍した、先駆的なキャリアウーマンです。監督の中平康もまだ早いと言われたのをターキーが監督に昇格させたらしいです。
外国映画

タワーリング・インフェルノ(1974年)

1970年前後のアメリカは長期化するベトナム戦争の真っただ中で、ハリウッドも娯楽に徹した作品を打ち出しきれずにいました。そこに登場した新しいジャンルがパニック映画。戦う相手が自然災害や大規模事故なので、戦争賛成・反対などの政治色を出さなくて済みますし、困難に立ち向かう人びとをドラマチックに描くこともできます。たぶん最初のパニック映画は1970年の『大空港』だと思いますが、ブームの火付け役は1972年の『ポセイドン・アドベンチャー』。そしてその火を業火のごとく燃え上がらせたのが、この『タワーリング・インフェルノ』でした。
外国映画

トラ・トラ・トラ!(1970年)

「トラ・トラ・トラ」は日本軍による真珠湾攻撃の開始を伝える暗号文。映画の中でも、田村高廣演ずる淵田中佐がゼロ戦の機上から「トラトラトラや」と叫ぶ場面がありました。あくまで「奇襲」が成功したことを伝えるもので、攻撃の成功を報告するものではないんですね。日米合作にあたっては、大変な紆余曲折があり、中でも黒澤明の降板が大きな話題になりました。
日本映画

大巨獣ガッパ(昭和42年)

昭和四十一年七月にテレビで『ウルトラマン』の放映が始まると、怪獣ブームは頂点に。すでに『ガメラ』を生み出していた大映は、昭和四十二年三月『大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』を大ヒットさせます。同じ月に松竹が『宇宙大怪獣ギララ』を公開すると、そのすぐ翌月には日活がこの『大巨獣ガッパ』を封切りました。日本映画が斜陽の時代、とりあえず怪獣映画を作っとけ、みたいなノリだったのかもしれません。
外国映画

007ドクター・ノオ(1962年)

ジェームズ・ボンドがはじめて映画に登場。以来五十年も映画界を代表するヒーローとして活躍し続けています。ボンドガール、車、銃器、欧米以外の国、タキシード、酒、タイトルデザイン。007シリーズのエッセンスはすべてこの第一作に詰め込まれていたんですね。誰もが知っているギターリフのテーマ曲はモンティ・ノーマンの作曲。映画史上最も有名な主題曲ではないでしょうか。
日本映画

彼岸花(昭和33年)

前年の『東京暮色』までずっとモノクロしか撮っていなかった小津監督による初めてのカラー作品。小津安二郎はトーキーが出てきたときも、サイレントにこだわってなかなか音に手を出しませんでしたが、『彼岸花』は「色」に手を出したことで、小津ワールドがより一層完璧なレベルで表現されています。基本的には、いつもの通り、嫁に行く行かないといった父と娘の物語なのですが、『彼岸花』では母親役の田中絹代がとってもよいアクセントになっています。
外国映画

ジャイアンツ(1956年)

「ジャイアンツ」と言われると、すぐにプロ野球を思い出してしまいますが、原題は"Giant"で、エドナ・ファーバーの小説の映画化作品です。ジョージ・スティーヴンスにとっては、西部劇の名作『シェーン』とともに代表作のひとつ。アメリカにおけるテキサスの歴史や風土を体感することができる大作で、3時間20分の上映時間を我慢できる方にはぜひ見ていただきたい長編映画です。
外国映画

終着駅(1953年)

ヴィットリオ・デ・シーカといえば『自転車泥棒』が有名で、ネオリアリズモと呼ばれる現実直視型の暗い映画が専門のようですが、この『終着駅』はリアルな演出をしながらも、基本線はメロドラマなところが特徴です。ローマのテルミニ駅に着いてから、パリ行きの直行列車が発車するまでの1時間半をほとんど映画の上映時間と同じ尺で描いています。さまざまな人たちが行き交う駅の構内で、不倫の深い仲になった男女がローマに残るのか残らないのかを決めることは、女が夫を捨てるのか捨てないのかにつながります。恋愛映画でありながら、サスペンスフルな展開が楽しめる佳作です。
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