リオの男(1964年)

底抜けに楽しめるアクション映画。ベルモンドの走り方がカッコいい!

こんにちは。大船シネマ館主よのきちです。今日の映画は、フィリップ・ド・ブロカ監督の『リオの男』です。ジャン=ポール・ベルモンドと聞いて『勝手にしやがれ』を思い浮かべる方はアート映画志向なのに対して、この『リオの男』がすぐに思い出される方は娯楽映画志向なのではないでしょうか。それくらいベルモンドにとっての代表作のひとつ!とても楽しい映画で、気分がモヤっているときに見て、頭の中をすっからかんにしてしまいましょう。

【ご覧になる前に】ベルモンドのスタントなしの演技にご注目

ブザンソンの見習い航空兵アドリアン(ベルモンド)が、一週間の休暇で恋人のいるパリにやってきます。しかし、恋人のアニエス(フランソワーズ・ドルレアック)は不気味な男たちに誘拐されてしまい、その身はオルリー空港からリオ・デジャネイロへ。

ひたすら恋人を追うアドリアン。走るのはもちろん、バイクや車もベルモンドが自ら運転していますし、高層ビルの壁面をつたったり、工事現場の細い板を渡ったりするのもスタントは使いません。役になりきって、全部を自分の身体で演技する。そんなスタイルを最初に確立したのが、ジャン=ポール・ベルモンドなのです。

そして、ヒロインのフランソワーズ・ドルレアック。言うまでもなく、カトリーヌ・ドヌーヴのお姉さんですよね。本作の次に出演した『柔らかい肌』の不倫女性とは正反対に、おキャンな品の良さが魅力的です。『007 サンダーボール作戦』の悪玉をやるアドルフォ・チェリも重要な役で出ています。

【ご覧になった後で】スピルバーグが大好きな理由は?

みなさん、いかがでしたか?脚本があまりにめちゃくちゃで突飛すぎるので、論理的思考の持ち主の方々は見ていてイライラしたことでしょう。でも、細かいことを突っ込まないのが、この手の映画の楽しみ方ですよね。「なんでここでこうなるんだ?」とか「ここの扉はなんで開くんだ?」とか考えてはいけません。ひたすら長い脚で内股気味で走りまくるベルモンドを堪能する映画です(そういえば『勝手にしやがれ』のラストシーンもベルモンドの走りは内股気味でした)。

ファーストシーンとエンディングでは普通の人。でも仕事を離れると冒険家。そしてジャングル奥地の洞窟で三体の銅像をそれぞれの位置に置き、ある時間になると太陽の光が財宝のありかを指し示す。これ全部そのまま『レイダース/失われた聖櫃』に使われています。スピルバーグはこの映画が大好きで何回も繰り返し見たそうです。ジョージ・ルーカスの『スター・ウォーズ』が黒澤明の『隠し砦の三悪人』をモチーフにしたように、スピルバーグをインスパイアしたのが『リオの男』だったのです。

『リオの男』では靴磨きの男の子が大活躍しますが、子どもを重要な役に起用するのもスピルバーグと共通していますね。「ウィンストン卿」と名乗る少年は、アメリカ人観光客には「リズ・テイラー」と言い、フランス人だとわかると「ブリズィット・バルドォー」にチェンジ。そしてひとり暮らしらしい少年の住まいは、テーブルやベッドが壁に収納される仕組みで、ボロ家だけどすこぶるモダンな造り。ほとんどがロケで撮られていますが、少年の家の場面だけは美術監督の腕の見せ所だったのでしょう。

カラフルな横縞がくるくる回転するアニメーションに合わせて、サンバのリズムが流れるオープニングがとてもお洒落でした。音楽を担当しているのは、ジョルジュ・ドルリュー。トリュフォーの映画をはじめとしてヌーヴェル・ヴァーグの多く作品で楽曲を提供しています。

監督のフィリップ・ド・ブロカは、1962年の『大盗賊』でベルモンドとコンビを組んでから、この『リオの男』も含めて六本の作品でベルモンドを主役に起用しています。アート系映画がお好みの方にとっては『まぼろしの市街戦』の監督としてのイメージが強烈だと思いますが、娯楽映画大好き派はやっぱり『リオの男』を最高傑作に推されるのではないでしょうか。(T091621)

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