続 黄金の七人 レインボー作戦(1966年)

「黄金の七人」シリーズ第二弾は南米の共産主義国に潜入して金塊を盗みます

こんにちは。大船シネマ館主よのきちです。今日の映画は、マルコ・ヴィカリオ監督の『続 黄金の七人  レインボー作戦』です。1965年に製作・公開された『黄金の七人』が大ヒットしたため、ちょうど一年後にこの続編を劇場公開することになりました。フィリップ・ルロワの教授をはじめとする7人のメンバーとロッサナ・ポデスタ演じるジョルジャによる強盗団はまったく同じキャラクターが再登場しますし、ゴキゲンな音楽はアルマンド・トロヴァヨーリを再び起用。前作の雰囲気はそのままながら、キューバをモデルにしたと思われる南米の共産主義国家を舞台にして大掛かりな将軍誘拐作戦が繰り広げられる冒険アドベンチャー仕立てになっているのが見どころです。

【ご覧になる前に】マルコ・ヴィカリオが製作・脚本・監督を兼ねています

女装した教授が銀行に隠しカメラをセットするかたわらで、廃線になって骸骨が並ぶ地下道を利用して、アドルフ以下「ア」から始まる名前を持つ6人のメンバーたちは、銀行の金庫をまるごと貨車に乗せて運び出すことに成功します。ところが地下道の出口に待ち構えていた黒服の男たちに捕らわれてしまい、アメリカ政府の要人が並ぶ会議室に連行されます。教授と6人はそこで南米のとある国に潜入して共産主義政権のトップである将軍を誘拐すれば奪った金庫を返してやるといわれ、米国海軍の潜水艦に乗り込み南米に向うことに。6人が海から侵入する一方で、ジョルジャはジャーナリストに化けて将軍に取材を始めるのでしたが…。

前作『黄金の七人』は銀行から金塊を盗み出す前半部と大量の金塊をイタリア国外に運び出す後半部がバランスよく配置されて、教授とジョルジャ、6人のメンバーたちが化かし合いをしながらも結局は金塊を手放すことになってしまう皮肉な結末が逆に爽快感を感じさせる傑作犯罪コメディでした。あの双葉十三郎先生も☆☆☆★★★と高評価していて「マルコ・ヴィカリオ監督には泥棒賞を進呈しよう」とコメントするくらいのお気に入りだったようです。「ドロボー映画は数あれどこれは大いに認めてよき一篇」と評されている通り、泥棒ものとしては明るくてセンスが良く、なおかつロッサナ・ポデスタのお色気ムードが加わった60年代らしいお気楽な娯楽映画なのでした。

『黄金の七人』が大ヒットしてそれなりの資金を手にしたんでしょうか、マルコ・ヴィカリオはすぐに続編の製作に取りかかるのですが、やっぱりお金をかけられるとなると当時のトレンドを取り入れてみたいと思ったのでしょう。1966年といえば、前年末に公開された『007サンダーボール作戦』が世界興行収入第2位の大ヒットを飛ばしていた時期。シリーズで初めて水中アクションを取り入れたこの作品を見てマルコ・ヴィカリオは「まずこれを真似しよう」と思いついたんではないかと想像されます。『サンダーボール作戦』の舞台はバハマでしたが、全く同じでは面白くないのでカリブ海のキューバに目をつけて、最高指導者の地位にあったカストロをパロディ化するというアイディアを付け足したという経緯のような気がします。推測ですけど。

舞台設定が決まれば、あとは教授とジョルジャと6人を当てはめれば、もうシナリオは完成してしまうわけですし、007的な新兵器をいくつも投入すればそれなりの娯楽作品は出来上がってしまいます。ここらへんが変にオリジナルに拘るのではなく、面白いものはすぐに真似ちゃえというイタリアのラテン気質が伺えますよね。黒澤明の『用心棒』を何の断りもなくセルジオ・レオーネがパクってしまったのは1964年のことでしたが、盗作問題でアメリカ公開が3年近く遅れたという事件もマルコ・ヴィカリオはたぶん知っていたと思いますので、あくまでオリジナル脚本であることを貫き通しつつ、真似ができる部分をうまくパロディ化して取り入れるというスタイルで本作を製作したのではないかと思います。

【ご覧になった後で】チープなスパイアクション風の仕上がりが楽しめました

いかがでしたか?銀行泥棒が本職のはずなのに、なぜかキューバのような島国に潜入してその国の為政者を誘拐してくるというスパイアクション風のお話になっていました。そこが逆にユニークというかおふざけがハマったというか退屈せずに楽しく見られた要因だったような気がします。地下道を使った銀行強盗の場面から一転してアメリカ政府からの要望というマンガのような展開になり、潜水艦に乗り込んで南米の島国に潜入するのですから、かなり突飛な設定であることは間違いありません。さらに将軍がロッサナ・ポデスタの色仕掛けでメロメロになってしまうのもあまりに安易ですし、将官の襟章を見せるだけで将軍の部屋に侵入できてしまうシナリオには何の工夫も見られません。そもそも水中から苦労して陸まで運んだのが単なるジープ一台だけでそんな苦労するより現地でチョロまかしたほうがよっぽど簡単だろ、と思いますしね。でもそんないい加減さがかえってチープな気安さを呼び起こしてしまうのも事実で、浅はかな作りが観客を惹きつける魅力になっているのが本作の特徴ではないでしょうか。

そのチープさを強調するのがどうでもいいような新兵器で、例えばソ連の軍艦に乗り込むときの自動延伸式梯子。酸素ボンベからニョキニョキとせり上がって甲板に到達する仕掛けで、なんのことはない単なる梯子ですから別にそんな大仰な兵器にする必要はありませんし、そもそもそんなものを運ぶより酸素のほうが重要じゃないかと思うわけですが、あまりにバカらしい兵器なのでそこで笑いをとれればもう十分にその役割を果たしているのです。また将軍を運び出すためにカヌーボートをワイヤーで上階の部屋まで引き上げる作戦は、なぜボートなのかと思わせておいてその後でそのまま水中に運ぶ展開になって納得させるという仕掛けでした。梯子もボートもどちらもお金はかかっていなさそうなのでチープさは予算のせいなのかなと思いつつ、でもきちんとしたプロダクションデザイナーがいないままにマルコ・ヴィカリオが適当に発明したんじゃないかなと想像してしまいます。

そんな中で将軍の部屋から教授とジョルジャが脱出する際の空中浮遊ジェット装置は、ほとんど『007サンダーボール作戦』のオープニングシーンのパクリでしたね。この兵器だけは他と違ってリアルな作りでしたし高層階からの脱出に最適な機能が備わっているので、他の映画を真似したもののほうが出来が良いというのもなんともイタリア映画っぽい軽いノリで笑えます。しかもこんなポータブルジェットをいつどこから運んだのかという説明は一切省かれていますからホントいい加減だなあと思いますね。

前作に高得点をつけた双葉十三郎先生も本作のいい加減さには呆れたようで「前回より製作規模は大きいのに演出効果もなく悪ふざけに堕しているのは、調子に乗り過ぎて破目を外したと解すべきか」と厳しいコメントを寄せています。三作目の『新 黄金の七人 7×7』は「着想優秀なコメディで結構楽しめる」ということですので、「黄金の七人」シリーズでは本作が一番低評価に終わっているようです。まあ双葉先生のランキングはともかくとして、チープなスパイアクションとして見るとなんだか許せるような気もしますし、カラーコンタクトを含めて衣裳をとっかえひっかえして半裸で現れるロッサナ・ポデスタはまさしくこの頃が美しさの盛りの時期でヴィジュアル的にも十分見応えがあります。身体にぴったりとフィットした黒のライダースーツがあれほど似合う女優はロッサナ・ポデスタをおいて他にはいないでしょう。

そして相変わらずアルマンド・トロヴァヨーリの音楽はとびきりゴージャスでウィットに富んでいて、大変魅力的なメロディを聞かせてくれていました。トロヴァヨーリの音楽が加わるだけで本作の価値がグッと上がるような気がします。その音楽に合わせて白黒画面のモニターが左右に配置されるタイトルデザインもなかなか洒落てしましたし、黄色いトラックと黄色い作業着で元の銀行強盗に戻るエンディングも気が利いていました。たぶん前作で撮影したNGフィルムを使いまわしているような気もしますが、あのエンディングがあるからこそ、内容はハチャメチャなスパイアクションでもしっかり続編としてのポジショニングが維持できているのだと思います。やっぱりエンディングって大事ですよね。(U101523)

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